第13回いけせん誌上句会

[第3回東京池袋川柳会誌上句会]

 

募集期間  2016.2.10〜2016.5.30

投句総数  1037句

主   催  東京池袋川柳会


●題と選者

題 [ 燃える ]  松橋帆波 選

入 賞 入 賞 句 雅 号
特 選  「会いたい」を燃料にしてペダル漕ぐ  足立 有希
秀 作
 恋してるうさぎの耳は燃えている  吉川 勇
   向かい風 燃えれば燃えるものですね  神奈 伊知郎
   燃えないで下さい明日が辛いから  上池 三郎
ジュニア部門入賞  好きなこと心が赤く燃えている  中学二年/宮沢 真彩
佳 作
 ゆっくりと指から燃えて行く嫉妬  青山 一休
   嘘つきな指が一本燃えている  東 十郎
   ペンを持つ静かに燃えている言葉  岡本 恵
   朝夕に脂肪を燃やすスニーカー  SAMU
   IH燃えているのかいないのか  渋谷 史恵
   燃える場所ここよと君に導かれ  井関 由香里
   失言を燃料にするツィッター  小松 真人
   火事よりも野次馬を呼ぶスキャンダル  松永 智文
   目ん玉に炎が映り込んでいる  柳谷 益弘
   こすり過ぎ燃えて来そうなスマホかな  鈴木 章

●選評

総評

 「燃える」作品、1037作品を詠ませて頂き、心の底から「燃えたい」方が多いことに感銘いたしました。「燃える」から連想される事柄は、物理的燃焼 状態、またそれに比喩される精神状態、加えてその状態が進行しているさま、未然状態だが可燃性が高いさま等でしょう。「燃え尽き」てしまうと課 題から離れるかと思いましたが、たくさんの果敢なご投稿一句一句を丹念に鑑賞させて頂きました。残念ながら選考に残らなかった作品であって も、その思いは一人ひとりの大切な宝です。思いを大切に、次のチャレンジへ心を燃やしてくださいませ。

●選評

 特選句

坂道。寸時を惜しんで逢いに行く。深夜だろうか?など色々な状況が思い浮かびます。車や交通機関を使わず自転車でという点も若い 情熱を想起させます。[会いたい]という括弧を使った表記から、心の呟きや、溢れる情熱が吐かせる「会いたい」という言葉など、様々な場面を連 想させます。

秀作

[恋してるうさぎ]

ウサギはひとりぼっちでいるとストレスをためてしまう生物です。常に誰かと繋がっていたい。SNS全盛の今を感じます。 「耳」はLINE?Facebook?そんな比喩を感じました。

[向かい風]

追い風も向かい風も、炎を燃え上がらせるのに十分エネルギーを持っています。追い風は人に能力以上のものを与えます が、向かい風はそれを跳ね返すために通常以上の能力を搾り出すきっかけとなります。内からの力、人の可能性を感じさせる作品です。

[燃えないで]燃えないでと訴えているのですが、実は燃えているのです。そして燃えることを期待しています。明日辛いのだけれど、受 け入れてしまうのです。その辛さは日々の充足感に繋がります。人の業を感じさせる作品です。

ジュニア部門

 [好きなこと]

平易な表現でありながら、世代を問わず共有性が高い作品です。「赤く」は安直だけれども、「青く」「碧く」など奇を てらっていないところに好感が持てます。

佳作

[ゆっくりと指から]

ゆっくりと燃えていく嫉妬。やがて二次関数的に急激に燃え上がるのでしょうね。

[嘘つきな指が]

薬指でしょうか。いつもはめているリングが今日はありません。そんなドラマをイメージしました。

[ペンを持つ]

感情的にほとばしる言葉より、冷静に淡々と主張を積み上げる言葉のほうが伝達性が高いですね。

[朝夕に脂肪を]

一駅歩くという健康法をイメージしました。

[朝夕]と[スニーカー]

一日のメリハリを感じさせます。

[IH燃えているのか]

面白いです。「燃焼」という現象は起きていませんが、調理器具を通じてガスが点火しているのと同じような状態を生み出し ます。厳密には「燃えていない」けれど「燃える」という課題に投稿されたセンスを買いたい。

[燃える場所]

火スイッチ。言葉で「ここよ」というだけでなく、仕種や行動で導かれていく。連想を広げてゆくことで楽しめる作品。

[こすり過ぎ燃えてきそうな]

極端だけれど面白い作品。こういう中高生を見かけます。ゲームに燃えているのでしょうね。中には画面がひび割 れている子も。

[失言を燃料にする]

些細なことが些細なきっかけで騒がれてしまいます。謝罪したり修正したり、削除するとそれがまた燃料になる。他の可燃 物が見つかるまでは終わらないのです。

 [火事よりも]

世の中情報化社会ですから、居ながらにして野次馬になれてしまいます。

[目ん玉に炎]

マンガ、アニメでお馴染みの表現。目は口ほどにものを言いますからね。

 

●題と選者

題 [ 燃える ]  米山明日歌 選

入 賞 入 賞 句 雅 号
特 選  めらめらと二月堂から春が来た
 中村 宗一
秀 作
 定年を目前にして矢吹丈  猪口 和則
   ベテランのここ一番の引火点  大釜 洋史
   ゆっくりと指から燃えて行く嫉妬  青山 一休
ジュニア部門入賞
 負けたくない燃える心にうそつかず  中学二年/石井 里駆
佳 作
 燃え上がる歓喜忘れた四分音符  田岡 弘
   眼の中に恋燃えている曼珠沙華  吉川 勇
   がん告知燃える太陽揺れ動く  永嶋 幸一
   線香を燃やし一本線を引く  井関 由香里
   別れ際あなたの嘘が燃えている  風祭 鉢郎
   あきらめぬ好きなスパッツはく日まで  畑中 真理子
   なにもせず内臓脂肪燃える夢  若林 正伸
   あなただけ極楽鳥花の赤い口  くりこ
   うちの孫掴まりまり立に燃えてます  佐藤 昭雄
   燃えるまなざしで明日を捕まえる  勝又 恭子

●選評

ジュニア部門

[負けたくない燃える心にうそつかず]

素直な心の句だとおもいました。私と同じです。燃えるとは、自分、ある時には、他人にも負けたくないという気持ちだと思います。正直な心を詠んでいると思いました。

特選

[めらめらと二月堂から春が来た]

水取りの行事のことですね。めらめらと春が来る。という表現にぐ、ぐっと惹かれました。燃えるからの発想。みごとです。

[定年を目前にして矢吹丈]

立て、立つんだ。という声が聞こえてきました。

[ベテランのここ一番の引火点]

ここ一番。引火点。締まった句に。ベテランの味がでてました。

[ゆっくりと指から燃えて行く嫉妬]

体の末端。しかも、ゆっくりと。指から燃える。と言う言葉に、妙に納得いたしました。