敗戦に近い花見の食べ残し　　　　　　

四月馬鹿水の流れを聞かそうか　　　　

さくらもち甘さの重み忘れかけ    

輪島塗にさくら餅あり負けられぬ

　  豆撒きを出来る幸せ鬼は外　　　　　　　　　　　　　　　

    節分の仕来たり鬼は生きている　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　☆新春川柳（豊島新聞新春特集号掲載）　　　　　　　　　

赤富士の絵に健康だけ祈り　　　　　　　　　　　　　　

サンシャインの底で見つける明日の種　　　　　　　　　

一年の疲れを癒す湯に抱かれ　　　　　　　　　　　　　

お節供を今年も無事に買え揃え　　　　　　　　　　　　

正月の鍋の美味さに寿命のび　　　　　　　　　　　　　

正月はアラーム音に困り果て　　　　　　　　　　　　　

登っても梯子の重み世紀末　　　　　　　　　　　　　　

　噛み合わぬ羽子板の羽はねのける　　　　　　　　　　　　

羽子板が母の記憶を悲しませ　　　　　　　　　　　　　

 買い換えた熊手に願い追いつかぬ　　　　　　　　　　　　　　　　

   日本の誇り境内に熊手舞う　　　　　　　　　　　　　　　　　　

南瓜食べ今日一日はハロウィン

コスプレの景色が殻を突き破る

均等に分けても梨の樹の不満　　　　　　　　　　　　　　　

他人の手借りぬ梨園の梱包　　　　　　　　　　　　　　　　

　夜空を括る打ち上げ花火のいのち　　　                             

 浴衣着と花火が変えた遊園地　　　                                    

暑い中来たか鬼灯懐かしむ　　　　　　　　　　　　　　　　

軒下に立つホウズキもわたくしも　　　　　　　　　　　　　

　紫陽花が咲く老いらくのラプソディー　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　紫陽花の小径に浮かぶ医師の顔　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

祭りの日誘われて酒を飲まず寝る　　　　　　　　　　　　

お神輿が眩しいばかり遠くいる　　　　　　　　　　　　　

　雑草が生えてる愛犬を連れて　　　　　　　　　　　　　　　

　雑草を見ている生気湧いてくる　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

群がっても都会の桜は孤独　 　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　

弱者生き生きと花見を盛り上げる　　　　　　　　　　　　　　　

世の流れ早さに焦らない古池

老いひとり鯉のあくびの池之端

[２０２３豊島新聞新年号掲載]

お酒より今は祈りの卯を描く

行先のない靴を履く老いの朝

コロナ禍をくぐって集う祝賀会

喜寿迎え学ぶ言葉が新しい

読み書きをハズキに頼る歳となり

あの頃のようでなくてもイブの夜

なぜ笑う母国へ帰るパンダ見て

「庭」

庭先の君は長閑であたたかい

「願う」

ご縁ならセカンドオピニオン挑む

「柱」

折れそうな柱に妻子ぶら下がり

「等しい」

☆等分に分けた遺産に愛はない

「劇」

アンコール息を合わせた夫婦劇

「囲む」 

血縁を取り囲んでるドナー待ち

「祈る」

ワクチンに五度の祈りをする怖さ